これはまるで、今まで3次元的に手をつないでいた磁石たちが、磁場によって突然手を離して1次元の「線」のような配置にばらけてしまったようなものです。
このような現象は自然界では非常に珍しく、物理学者にとって大変刺激的な発見となりました。
次に応用の視点から考えてみましょう。
今回見つかった「磁場で秩序が壊れ冷却される」という仕組みは、将来的にエネルギー効率が非常に良い新しい冷却技術を生み出す可能性を秘めています。
現在、私たちの身の回りで使われる冷蔵庫やエアコンは、フロンガスなどの冷媒を使って冷却しています。
しかし、環境問題やエネルギー問題が深刻化する中で、こうした従来の冷却技術に代わる「磁気冷却技術」という新しい選択肢が注目を浴びています。
磁気冷却は、有害なガスを使わずに磁石の力で温度を制御するため、環境に優しい冷却技術として期待されているのです。
今回の研究で得られた結果は、アタカマイトそのものが実際の冷却装置に使われるという意味ではありません。
実際に研究チームも「もちろん将来このためにアタカマイトが大量採掘されるとは思っていません」と述べています。
むしろ重要なのは、この研究が示した「磁場によって磁石のもつれを解消すると、強力な磁気冷却効果が得られる」という原理そのものです。
この原理をヒントに、室温付近でも強力な磁気冷却効果を示すような新たな材料を開発できるかもしれません。
たとえばより安価で大量に用意できる物質を上手組み合わせてたメタマテリアルで同様の効果が達成できるようになれば、磁気冷却の実現に近づくでしょう。
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参考文献
Defying physics: This rare crystal cools itself using pure magnetism
https://www.sciencedaily.com/releases/2025/07/250705084251.htm