ショウジョウバエは遺伝子の多くが人間と共通していて、ヒトの免疫システムやがんの仕組みを調べる上でも役立つ生物です。

ヒトでは簡単には調べられない細胞レベルの変化を、ショウジョウバエなら詳しく観察することができます。

研究グループは、ショウジョウバエに人間のがんに似た悪性腫瘍を発生させることで、体内で何が起きているのかを詳しく調べることにしました。

特に、がん細胞とマクロファージがどのように相互作用しているのかを遺伝子レベルで詳細に調べ、この奇妙な協力関係が具体的にどんな仕組みで成り立っているのかを明らかにしようと試みたのです。

マクロファージが本当に『掃除屋』から『肥料』に変わってしまうなら、その仕組みは一体どのようなものなのでしょうか?

免疫細胞が『掃除屋』から『がんの味方』へ

免疫細胞が『掃除屋』から『がんの味方』へ
免疫細胞が『掃除屋』から『がんの味方』へ / a/Credit:死んだがん細胞の捕食ががんの爆発的増殖を促進 ~マクロファージの”貪食” ががんを育てる意外な仕組みをハエで発見 新たな治療法の確立に期待~

マクロファージが本当に『掃除屋』から『肥料』に変わってしまうなら、その仕組みは一体どのようなものでしょうか?

この謎の答えを得るために、名古屋大学の研究者たちはショウジョウバエを使うことにしました。

ショウジョウバエを使えば、生きたままの腫瘍細胞とマクロファージの動きをリアルタイムで観察することが可能になります。

実験ではまず、ショウジョウバエの眼の組織に遺伝子操作によって人工的に悪性腫瘍(がん細胞)が作られました。

そしてその腫瘍の成長を追跡したところ、腫瘍の一部の細胞が死に、その死んだ細胞を目がけてマクロファージが集まり始めることが観察されました。

通常、マクロファージはこうした細胞の死骸を取り込んで掃除しますが、今回注目すべきなのは、マクロファージががん細胞を取り込んだあとに何をしているかということでした。