そうした心理的ハードルが女性のオーガズム達成率を下げている可能性もあります。

一方、男性側では先述のように「肛門の快感=ゲイっぽい」という偏見が根強いことから、特に異性愛男性では肛門への刺激自体を避けたり軽視する傾向があるかもしれません。

性的嗜好や価値観によっても、感じ方や答え方には差が生じうるわけです。

本研究はアンケートによる自己申告データを用いており、回答者が主観的に感じた快感やオーガズムをベースにしています。

そのため記憶違いや回答バイアスの可能性は残ります。

また調査対象はシスジェンダーの男女に限られており、トランスジェンダーやノンバイナリー(Xジェンダーなど)の人々は含まれていません。

従って、性多様性を含む全ての集団に今回の知見が当てはまるとは言えず、今後はより多様な参加者を含めた研究が望まれます。

とはいえ、本研究は肛門性交のポジティブな側面に光を当て、その実態を科学的に示した点で画期的です。

多くの男女が肛門で快感を覚え、中でも前側の浅い部分が人気であること、そして男性は女性より挿入刺激のみでオーガズムに達しやすいことがデータで裏付けられました。

これらの発見は、肛門にも明確な性感帯が存在し、それが神経解剖学的に説明しうる現象であることを示しています。

今後この知見が広まれば、アナルセックスに対する根強いタブーや誤解の解消にもつながるかもしれません。

実際、研究者たちは「肛門の性感構造を理解することで、患者へのより良い性的カウンセリングや、肛門周辺の手術・治療後の影響予測に役立つ可能性がある」と述べています。

(※たとえば手術などで直腸の一部を切除する場合、快感の源となりやすい浅い部分を切り取るのを可能な限り避けるなどの方法が提案できるでしょう)

セックスについて語る上で、快感や満足といった前向きな側面にもしっかり目を向けることの大切さを、本研究は教えてくれているのです。