つまり、一方のゲームでは必ず「勝利」というポジティブで満足感のある体験をし、もう一方のゲームではどうしてもクリアできず、少し不満な気持ちで終わる仕掛けになっていました。
ゲームを終えた参加者はその後、実験室で眠りにつきました。
その間、研究者たちは脳波(EEG:脳の電気活動を記録する技術)とMRI(脳の活動を画像で可視化する装置)を同時に測定し、睡眠中の脳がどのような活動をしているかを観察しました。
すると非常に興味深いことが明らかになりました。

被験者が入眠して間もなく、脳内に日中プレイしたゲームと同じ活動パターンが現れることが確認されました。
さらに、その記憶の再生中には、脳内の記憶を担当する「海馬」と、喜びや満足感を感じる「腹側被蓋野(VTA)」という部分が同時に活発に動いていることが分かりました。
つまり脳は、心地よい経験や達成感のある記憶を睡眠中に繰り返し選んで再生し、より強力な長期記憶にしようとする傍ら報酬信号として出て脳に「もっと再生せよ」と促していたのです。
実験の2日後、研究者たちは参加者に再びゲームの内容をどのくらい覚えているかの記憶テストを行いました。
その結果は明快で、睡眠中に繰り返し再生されていた「勝ったゲームの記憶」のほうが、はっきりと強く記憶されていました。
この結果は、睡眠中の脳がポジティブで気持ちの良い経験を特別に選び出し、その記憶を集中して強化していることを裏付けるものでした。
「気持ちよく眠る」が学習効率アップの秘訣に

今回の研究によって、「脳は睡眠中に気持ちの良い経験を特別に選んで繰り返し再生し、その記憶を強化している」可能性が示されました。