日本で販売される新車のうち、マニュアルトランスミッション(MT)車が占める割合はわずか1%程度です。日常生活でMT車を運転する機会は稀で、運転免許を取得する際も「わざわざ面倒で費用も高いMTを選ぶ意味がない」という考えが主流になりつつあります。
警察庁の運転免許統計によれば、2021年の普通免許合格者の7割以上がAT限定免許を選んでいます。もはや「少数派」となったMT免許ですが、取得している人たちはどのような理由でMTを選んだのでしょうか。近年MT免許を取得した若い世代へのインタビューから、その背景を探ります。
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憧れの車に乗りたい
憧れの車に乗りたい

MT免許を選ぶ理由として、最も多いのが「MTで乗りたい車があるから」という動機です。インタビューでも複数の若者から同様の意見が聞かれました。
ある20代の男子大学生は、「昔からスポーツカーが好きでMT一択でした。大学生になる前の春休みに免許を取り、バイトで貯めたお金でスイフトスポーツを買いました。周りにも車好きの友達が多く、自分にとってはこれが当たり前のように感じます」と話します。
また、MT免許取得の意外なメリットを挙げる人もいました。別の20代の男性会社員は、「R32スカイラインやFD型RX-7に乗りたくてMT免許を取りました。しかし、スポーツカーの価格が高騰し、今は手が出ないので中古の86に乗っています。次に買うのもおそらく新型のGR86でしょうね」と言います。さらに彼は、「おそらくこれからも国産スポーツカーは価値が落ちないと思いますし、そういった意味でもMT免許は持っておいて損はないと思います」と、将来的な資産価値を見越した視点も示しました。
実際、国産スポーツカーの中古車価格は国内外で高騰しています。米国の「25年ルール」の対象となる90年代のスポーツカーだけでなく、近年生産が終了した車種なども含め、MTスポーツカー全体が高値で取引されている状況です。こうした市場の動向も、「将来的な価値」を考慮してMT車を選ぶ一因となっているのかもしれません。