青森山田は、2024年大会では準優勝で連覇を逃し、今大会は出場すら逃した。2022年まで監督を務めた黒田剛氏(現町田ゼルビア監督)が植えつけた厳格な規律とフィジカルを重視したスタイルに支えられてきたが、現代サッカーではテクニックや戦術の柔軟性がより求められるようになっている。

伝統校も変革を迫られ育成方針を見直し、攻撃的なスタイルや選手の創造性を重視する方向へシフトしつつある。

高岡伶颯 写真:Getty Images

戦術の進化、指導者レベル向上、育成環境の変化

近年の高校サッカーにおける戦術の進化は著しい。かつてはロングボールやフィジカル勝負が主流だったが、Jリーグや欧州サッカーの影響を受け、ポゼッション志向やハイプレス戦術が浸透している。

昌平の成功は、ショートパスを繋ぎながら相手の守備を崩すスタイルにあった。また、桐光学園高校(神奈川県代表)や尚志高校(福島県代表)も、ビルドアップやプレッシングを重視した戦術で結果を残している。

戦術進化の背景には、指導者のレベル向上があると言える。JFA公認ライセンスを持つ指導者が増え、Jクラブの監督を務めることもできるJFA Proライセンスを所持している監督も珍しくない。科学的データや映像分析を活用した指導も広まっている。さらに、Jリーグのユースチームとの交流により、高校年代でもプロレベルの戦術理解が求められるようになっている。

育成環境の変化も、高校サッカー界の地殻変動を後押ししていると言えるだろう。Jリーグのユースチームや高校年代のクラブチーム(いわゆる“街クラブ”)との連携も強化され、高校サッカー部に所属しながらプロのスカウトを受ける選手が増えた。

例えば、日章学園高校のFW高岡伶颯(2024年インターハイでは宮崎県予選決勝戦で2得点したものの全国大会は負傷欠場)はJリーグを飛び越え、プレミアリーグのサウサンプトン入団を果たした(2024年6月19日契約発表、2025年3月本契約)。こうした例は、インターハイが単なる高校生の大会を超え、国際的なスカウティングの場となっていることを示している。