羽石氏(以下、敬称略):はい、ありがとうございます。 株式会社識学の上席コンサルタント、羽石と申します。 よろしくお願いいたします。

識学とは何かと申しますと、人間が物事をどう認識し、行動に至るまでの思考プロセスを研究したものです。 私たちは、人が間違った行動を取るのは、環境を正しく認識できていない、つまり「誤解」や「錯覚」に陥っているからだと考えています。 組織や個人が成果を出せない時、そこにどんな誤解や錯覚が起きているのかを探り、解決策を提供していくのが我々のアプローチです。

「上司ガチャ」に負けたら?:情緒を飛び越えた相談の禁止

玉村:まず最初の質問です。 識学では、直属の上司を飛び越えて、さらにその上の役職者に相談することは「禁止」されていますよね。 しかし、もし直属の上司が事なかれ主義で、部下がデータに基づいて画期的な提案をしても「前例がない」と却下し続けるような人だったら、どうすればいいのでしょうか。 部下は諦めるしかないのですか?

羽石:諦めてしまうのは、もったいないですよね。 そもそもなぜひとつ飛ばしの相談がダメかというと、組織の根幹である「役割」と「責任」の所在が曖昧になり、あいだの管理職が育たなくなってしまうからです。

ただ、ご指摘のケースで重要なのは、「なぜその上司が事なかれ主義に陥っているのか」という根本原因を分析することです。 もしかしたら、その上司の役割や責任が不明確で、波風を立てなくても評価される環境にあるのかもしれません。

玉村:なるほど。では、例えば社内に「提案制度」のような仕組みを作り、誰からでもアイデアを吸い上げるというのは、識学の考え方としてはいかがでしょうか?

羽石:それ自体は問題ありませんが、前提として「役割と責任」が明確になっていることが重要です。 提案する側も無責任ではなく、エビデンス(証拠)に基づき、「こういうルールで運用すれば、こういう成果が見込めます」というレベルで提案する。 そして、それをジャッジする責任者がきちんと判断する。 もちろん、全ての提案が通るわけではないという共通認識も必要です。 こうした前提が整っていれば、むしろどんどん提案を上げるべきですし、実際に識学の社内でもそうした仕組みはありますよ。

「松阪牛と偽って売れ」:明らかに誤った命令への対応