参加者のうち1つのグループには、架空のニュース記事を読んでもらいます。
「ある大学教授が授業中に意図的に人種差別的な発言をした」というものです。
そして別のグループには、同教授が意図せず似たような言葉を使ったという非意図的事例を提示。
さらに、それぞれのグループには、「この教授に反対する団体(寄付のたびに教授の解任を求める手紙を送る)に寄付できます」という報復オプションを提示する場合と、通常の寄付先だけを示す(=報復オプションなし)場合の2パターンが用意されました。

その結果は明快でした。
「意図的に差別発言をした」と判断されたケースで、報復オプションありの寄付が最も選ばれたのです。
そして研究全体の成果から、以下の主要な発見が浮かび上がってきました。
- 寄付は「助けたい」だけでなく「罰したい」という動機でも行われうる。
- 「意図的な悪事」「それへの道徳的怒り」「具体的な加害者の存在」が揃うと、報復的寄付が起こる。
- 一部の性格特性(特に権威主義傾向が強い人)は、この種の寄付を好む。
- 寄付の「効力」(=加害者にダメージが届く実感)が高いほど、寄付意欲は増す。
これらは、従来の寄付の動機とは大きく異なるものですが、現在でも確かに存在するのです。
では、この寄付や動機を「利用」することはできるでしょうか。
報復的慈善活動を活用できるのか
研究者たちは、この報復的慈善活動が寄付総額を増やす可能性に注目しています。
なぜなら、「従来なら寄付をしない層」でも、怒りや正義感を引き金に行動を起こすからです。
つまり、人々の怒りの傾向を利用すれば、多くの寄付を集められるかもしれません。

しかし、重大なリスクも存在します。
例えば、「敵」を作るようなキャンペーンは社会を分断する可能性があり、通常の支持者が疎外感を抱く危険性があります。