脳の特徴はあくまでリスクの一部であり、遺伝的な要因や成長する環境、友達関係や性格など、さまざまな要素が絡み合って初めて薬物を使う行動につながります。

したがって、「脳のMRIだけで将来的な薬物使用を判断する」ような使い方はまだ現実的ではありません。

しかし、薬物使用リスクを事前に理解するためには、今回発見された脳の違いが重要なヒントになることは間違いありません。

では、脳構造の違いが薬物使用のリスクを高めるという事実は、具体的にどのように役立てることができるのでしょうか?

薬物リスクは才能の裏返しになり得る

薬物リスクは才能の裏返しになり得る
薬物リスクは才能の裏返しになり得る / Credit:Canva

今回の研究によって、「薬物を使い始めるよりも前に脳構造に違いが存在し、それが薬物使用のリスクを高めている可能性」が示されました。

これまで一般的には、「薬物を使うと脳がダメージを受け、その結果として依存症になる」という考え方が主流でしたが、この新しい研究結果は、まったく逆の方向からこの問題に光を当てています。

では、この「薬物使用を引き寄せやすい脳構造」とは、一体どんな特徴を持った脳なのでしょうか。

わかりやすく言うと、それは車で例えると「ブレーキが弱くてアクセルが強い」という特徴を持つ脳である可能性があります。

脳の中でも特に「前頭前野」という部分は、私たちの行動や感情を制御し、慎重に考えて行動するための「ブレーキ」の役割を果たしています。

ところが薬物を使い始めるリスクのある子どもたちは、この前頭前野が比較的薄く、十分に成熟していない可能性が指摘されています。

一方で、報酬や喜びを感じたり、新しいものへの好奇心を生み出したりする「アクセル」の役割を果たす脳の部位は平均よりも厚く、発達が旺盛でした。

こうした脳の特徴は、単純に「悪い」わけではありません。

なぜなら、これらの特徴は、冒険心や好奇心、創造性を豊かにすることにもつながるからです。