この規定は罰則が無いため、被害者が個別に削除請求や仮処分の申し立て、訴訟提起して民事損害賠償請求をするしかありません。
猫組長の訴状に『元暴力団員の日本保守党広報である!』???闇クマ本名投稿と情プラ法7条
これでは実効性が無いのでは?という問題意識が生まれました。
開示命令制度で手続迅速化をした反動で実質的な要件緩和となるなら、開示で得られた発信者情報を濫用する者が出現することへの抑止力も働かせなければならないでしょう。
特に裁判官は「本訴で争ってね」という方針を安易にとることに、何らのリスクが無い状態です。匿名活動者が情報開示されれば失われる利益*2は取り返しがつかないのだから、本訴で不法行為が認められなかった場合に何らかの手当てが必要では?という立法論が思いつきます。
裁判例では誹謗中傷の損害よりもそれにかかる開示請求で得られた発信者情報の流布による損害の方が多く認定された事案もあります。
参考:発信者情報をネットでさらしたら目的外使用、損害賠償 | 神奈川県厚木市・横浜市のジン法律事務所弁護士法人
もっとも、猫組長側は、公益性のある事案として実名を知らしめるべきと判断した、という旨を言っているので、これは敢えて上の条文に引き付けて言うならば、「みだりに用いて」にあたらない、という主張に当たります。それとは別に、実際にこの点が訴訟になったならば、闇クマ氏のこれまで言動、事案の特殊性などから違法性阻却事由として主張されるのでしょう。
しかし、この規定が犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律(平成 12 年法律第 75 号)第3条第3項及び刑事確定訴訟記録法(昭和62 年法律第 64 号)第6条と同趣旨のものである*3ことを考えると、闇クマ氏の本名をSNSで公開することの意義があるとは到底認めがたいが、何か他の事情でもあるんでしょうか?
国政政党の党首・幹部らによるプライバシー情報の流布問題
仮に猫組長の行為が情プラ法7条違反ではなかったり、許されざるプライバシー侵害としての不法行為ではなかった場合でも、日本保守党の党首である百田尚樹氏と事務局長の有本香氏による引用投稿は、それ自体が非難を浴びるべき所業です。