たとえば、飛行機事故のような珍しい出来事がニュースで大々的に報道されると、その出来事が実際よりも頻繁に起こるように錯覚してしまいます。
これは注目を集めやすい出来事ばかり記憶に残るために、その発生確率を過大評価してしまう「利用可能性ヒューリスティック」と呼ばれる、人間の心理的なバイアス(偏り)の一つです。
また一方で、私たちの判断には不安定さ(ノイズ)も存在しています。
同じ人が同じ状況で判断を繰り返しても、状況に関係ない小さな変化(例えば天気やその日の気分など)によって判断が揺れることがあります。
たとえば50年後の自分の健康状態を予測するとき、自分の生活習慣や体重など冷徹なデータよりも、天気が晴れてて気分がいいから50年後も「凄く健康」と答えたり、雨が降って濡れてしまって今寒いから50年後は「不健康」と答えるような、関係の薄い現象に振り回されて判断がブレブレになりがちです。
最近ではノーベル賞受賞者ダニエル・カーネマン氏らも、判断エラーにはバイアス(系統的誤り)だけでなくノイズ(不規則誤差)も含まれ、両者の削減が同等に重要だと指摘しています。
心理的な偏りだけでなく日常の細かな出来事に振り回されないことが、判断を間違わないようにするために大切となるのです。
では、こうした確率判断の正確さに個人の知能(IQ)は関係するのでしょうか?
実際にIQが高ければ、こうしたバイアスやノイズの影響を比較的抑え、より正確に未来を見通せる可能性が高いことが示唆されています。
直感的には、頭がいい人の予測は正確に思えます。
しかし意外なことに、確率判断の精度とIQの関係はこれまで直接には検証されてきませんでした。
そこでイギリスのバース大学の研究チーム(クリス・ドーソン教授ら)は、「IQが高い人ほど未来を正しく予測できるのか?」という根本的な疑問を調べることにしました。
果たしてIQの高さと予測の正確さは連動しているのでしょうか?
IQと予測力の関係を科学が解明
