一方、ブライニクルでは、ブラインは重いため下に向かって流れます。しかし、どちらも「内部の液体が周囲と接し、チューブ状の構造を作る」という点では共通しています。

2013年には、スペインの研究者ジュリアン・カートライト博士らがこの類似性に注目し、ブライニクルは「逆さに成長するケミカルガーデン」だとする論文を発表しました(『Langmuir』誌掲載)。この発想により、ブライニクルという現象は、単なる極地の珍しい氷の構造ではなく、物理・化学の法則が生み出す普遍的なパターンの一つとして位置づけられるようになったのです。

とてつもなく冷たい塩水が海水を凍らせながら海底へ伸びていき、その先にいる生物まで凍らせる。

自然は時に、美しく、そして残酷な非常に興味深い現象を見せてくれます。

“死の氷柱”という名にひそむこの現象もまた、私たちに自然の奥深さと、そこに潜む秩序の存在を静かに教えてくれているのかもしれません。

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元論文

Experimental modelling of the growth of tubular ice brinicles from brine flows under sea ice
https://tc.copernicus.org/articles/18/2195/2024/
Brinicles as a case of inverse chemical gardens
https://doi.org/10.48550/arXiv.1304.1774

ライター

相川 葵: 工学出身のライター。歴史やSF作品と絡めた科学の話が好き。イメージしやすい科学の解説をしていくことを目指す。

編集者

ナゾロジー 編集部