とはいえ生産コストを考慮すれば、12千円~15千円では35.8万戸の農家は60kg当り1万円近くの持ち出しになる。どう補填して来たのか、門外漢の筆者に真相は判らないが、兼業農家であることや何らかの補助金があったからではなかろうか。逆に、10ha以上を耕作する大規模農家にとって、生産コストに倍する買い取り価格はずいぶんありがたかろう。

そこであるべき売値の話になる。生産者の事情は理解するとしても、安けりゃ安いほど良い、というのが消費者の心理だ。今回の騒動で、古古古米だろうと輸入米だろうと、その味の差は値段の差ほどには大きくない、ということを多くの消費者は知ってしまった。となれば、値段の基準は畢竟「輸入米の値段」ということになる。

輸入米の輸入価格は、米国産の中粒種「カルローズ」でCIF150円/kg程度(CIF:輸送費・保険料込み・日本港渡し)とされる(『読売』記事)。台湾米は、コメの輸出に関わっている知り合いの台湾人によれば、横浜港渡しのCIFで1.2USD/kg程、142円/USDなら170円だ。これに341円/kgの関税が乗って490円~510円、すなわち500円/kg前後が輸入米の仕入れ値である。

他方、国産の銘柄米が24千円/60kgなら400円/kgだから、輸入米から1kg当り100円のハンデをもらうことになる。これらは玄米の価格であって、店頭に並ぶまでには、精米⇒小分け袋詰め⇒冷蔵保管などのコストや段階毎の運賃とマージンが乗る。それらが仮に2000円/5㎏とすれば、玄米で400円x5kg=2000円だった銘柄米が、4000円/5㎏といった価格で店頭の並ぶのである。

が、ここでもし大手の小売り業者が新規参入して流通を簡素化し、輸入・精米・小分け・保管に利益を含めて1000円/5kgで賄うなら、500円x5kg=2500円+1000円=3500円/5kgで店頭に並び、4000円の銘柄米は売れ残る。つまり、3000円台前半から3500円辺りが、銘柄米が目指すべき売値なのである。消費者には申し訳ないが、農家が立ち行かなくなる2000円台の低価格にする必要はない。