レジ袋有料化やベトナムの火力発電といった、環境相としての小泉進次郎氏の対応は全く評価しない筆者だが、農水相としての仕事振りは買っている。無茶なところが良い。が、細かいところでは問題もある。例えば「(コメを)じゃぶじゃぶにしてかなきゃいけないんだと、そうじゃなかったら価格は下がらない」とか「農機、リースが当然」発言とか。
「じゃぶじゃぶ」発言には、「安ければいい、の追求では生産者が誰もいなくなる。小泉農水相には、現場を元気づけるメッセージを発信してほしい」とJA秋田中央会会長が苦言を呈した。また「リースが当然」には、農機のシェアリングサービス会社が「コンバインや田植え機は事業化が難しい」とし、SNSでも「使う時期はみんな一緒で、リースできない」との指摘が相次いだ。
が、疑り深い筆者にはこれらの指摘が「本当にそうだろうか」と訝しい。モノが何であれ、価格は需要と供給で決まるから、供給が勝れば価格は下がると相場が決まっている。進次郎氏の課題は「では幾らが適正なのか」まで思考が深まらないところにある。また、「農機のリース」については、そのヒントが台湾にある。以下では、これら二件について書く。
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コメの価格はどうあるべきか。この問いの解を容易く出し難い理由は、消費者と生産者に思惑・事情の違いがあり、かつ生産者の間でも大規模農家と小規模農家では生産コストに2倍以上の開きがあるからだ。後者では、作付面積が0.5ha未満~1haまでの35.8万戸の生産コストが約27千円~21千円/60kgであるのに対し、1ha~10haの19.5万戸では17千円~14千円、作付面積10ha以上の2.3万戸では12千円~10千円(50ha以上)で、作付面積と生産コストはほぼ比例する(農水省サイト)。
他方、コメの買い取り価格は、一昨年までの10数年間概ね12千円~15千円/60kgで推移して来たが、昨年(24年)は23千円~24千円に急騰した。需要と供給の経済原則に従えば、価格を上げるためには供給を絞る必要がある。つまり、昨年24千円で買い取ると決めた時点で、コメ不足にする必要が生じたのだ。誰がそれをしたかと言えば、「買い取った人たち」以外にはあり得まい。