なお、水力発電の中でも「揚水式発電」はこの集計に含めていません。なぜなら、揚水発電は発電を行う前に、別の時間帯に電力を使って水を上池へくみ上げる必要があるため、純粋な電源としては扱いにくいからです。実際、揚水の効率はおおよそ70%程度とされ、100MWhを発電するためには約130MWhの電力を消費します。そのため、発電量として加算してしまうと、逆に供給力を過大評価することになります。加えて、上池の水位が日々低下してしまうため、連続的に使用するには制限があるという点でも、日量ベースでの供給力には適さないといえます。
表1がその計算結果です。驚くべきことに、「再エネ供給率が100%」の日は1日も存在しません。私の計算に誤りがあるのでしょうか? 最も再エネ供給率が高かったのは、5月5日の祝日で、それでも95.5%にとどまりました。
再エネ供給率が90%を超えた日は赤字で示しましたが、わずかに3日間しかありません。さらに、80%を超えた日を青字で示しましたが、こちらも3日間のみです。赤字と青字を合わせると、日数は6日間になります。
おそらく、日経の記事が「再エネ100%」と表現したのは、この再エネ供給率が80%以上の日を便宜上100%とみなしたのではないかと推測されます。しかし、そうであればかなり無理のある数字の扱い方だと言わざるを得ません。
選定された期間にも問題があるのでは?
表1の赤字・青字の日を確認すると、4月26日、4月27日、5月3日、5月4日、5月5日、そして5月11日となっています。このうち5月11日を除く5日間は、いわゆるゴールデンウィーク期間に該当します。
この時期は、正月と並んで日本の経済活動が大幅に停滞する特殊な期間であり、多くの企業や工場が操業を停止します。つまり、電力需要が1年のうちでも極端に低い時期だといえます。
また、4月~5月は雪解け水が河川に流れ込み、水力発電が年間でもっとも稼働する時期です。図1を見ても、水力発電が約30%を占めており、これは他の季節には見られない高稼働ぶりです。夏場や冬場には、これほどの水力発電量は見込めません。