研究では夜間にわずか数ルクス程度の弱い光曝露でも健康リスクが徐々に高まり、特に100ルクス前後の環境(明るい室内や街灯の下程度の明るさ)では、心臓病リスクが著しく増加することが示されています。実践的には、寝室の照明は消し、必要なら小さく暗い間接照明を使用し、寝る前にはスマホやタブレットをなるべく見ないようにすることが推奨されます。
さらに注目すべき結果は、夜間の明るさによる心臓病リスクの上昇が、女性において特に強く現れていたことです。
通常、女性は同年代の男性に比べて心臓病のリスクが低いことが知られています。
ところが、この研究では、夜間の明るい環境で寝ていた女性は、本来持っているはずの「女性特有のリスクの低さ」がほぼ完全に打ち消され、男性とほとんど同じレベルまでリスクが上昇していました。
研究チームは、この結果について、女性の体内時計が男性に比べて明るい光の影響を受けやすく、それによって本来のリスクの低さが失われたのではないかと考えています。
この研究が画期的なのは、わずか1週間の光センサーのデータだけで、10年近く先に起こる心臓病リスクを高い精度で予測できた点です。
実際、研究者たちは「夜間の光を避けることが、心臓病のリスクを低下させるために有効な戦略となりうる」と述べています。
つまり、私たちが毎晩のように浴びている「人工的な光」が、単なる睡眠不足以上に重大な健康リスクを秘めていることが、長期間の追跡調査により初めて明確に示されたのです。
心臓病予防は『夜を暗くする』ことから始めよ

今回の研究によって、「夜間に明るい光を浴びることが、将来的な心臓病のリスクを大きく高める可能性」が初めてはっきりと示されました。
では、なぜ夜の光が私たちの心臓にこれほど悪影響を与えてしまうのでしょうか?
そのカギを握っているのが、私たちの体に組み込まれている「体内時計(サーカディアンリズム)」です。