この距離は太陽と地球の距離の100分の1に相当し、宇宙スケールでは非常に高い精度です。

こうした精度が実現すれば、探査機がはるかに効率よく恒星間の長い旅路を進めるようになるでしょう。

また、今回の研究で特に面白かった発見は、航行精度を高めるためには「多くの星を観測するよりも、近くの星をたった2つだけ観測する方がよい」という一見意外な事実でした。

私たちは普通、多くのデータを集めれば精度が高まると考えますが、この場合は逆に、観測対象を限定して高精度で測定するほうがはるかに効率的だったのです。

その理由は明確で、遠くの星ほど視差が小さくなり、測定誤差が大きくなってしまうからです。

プロキシマ・ケンタウリやウルフ359のような近くの星ほど視差が大きく、正確な位置の目印となります。

こうしたことから、未来の恒星間航海では近くの恒星だけを高精度に観測することが、最適な方法になる可能性が示されたのです。

さらに興味深いのは、この宇宙規模の航法技術が特別な観測装置を追加せずとも、宇宙探査機に元々備わっている観測カメラをそのまま利用できる点にあります。

言い換えれば、将来の宇宙船は自分の目(カメラ)を「宇宙の六分儀」のように使って進むことができるかもしれないのです。

これは、まさに古代の航海士たちが星空を見上げて海を渡った姿を彷彿とさせます。

今回の研究チームも、この成果をハワイの伝統的航海士カレパ・ベイバヤンさんに捧げています。

ベイバヤンさんは、星を頼りに太平洋をカヌーで渡るポリネシア伝統航海術の達人でした。

その古代からの航海術が、今再び宇宙探査という最先端の科学と結びついています。

宇宙空間で自分の位置を知る方法は、技術が進んだ未来においても、やはり星空にそのヒントがあるのかもしれません。

では、この星を使った航法は実際にどれくらい現実的な方法として使えるようになるのでしょうか?

そして、その実現にはあとどれくらいの時間と工夫が必要になるのでしょうか?