④考えたり決断する時間まで人間と似ている:さらに驚いたことに、ケンタウルは人間が実際に「考える過程」まで再現しました。具体的には、人間がある決定を下すまでに「どれくらい迷ったか」ということを示す「反応時間」まで、ミリ秒単位の精度で正確に予測できたのです。人間がある決定を下すまでにどれだけ迷うかということまでシミュレーションできる点は、人間の心理を理解する上で非常に貴重な示唆を与えます。

⑤人間の脳活動すら予測できる:何より衝撃的だったのが、脳活動(fMRI計測)との驚くべき一致です。研究ではケンタウルの内部で行われている情報処理と人間の脳の活動パターンがどのくらい似ているかを検証するため、実際の人間の脳活動データ(fMRIによる脳スキャンデータ)とケンタウルの内部状態を比較する実験が行われました。するとケンタウルは脳のデータを直接学習していないにもかかわらず、実際の人間が行動や意思決定を行う際の脳活動パターンを高精度で予測しました。つまり、人間とAIがそれぞれ独立して「最も効率的な意思決定プロセス」という同じ答えに辿り着いている可能性を示しています。人間の脳の働きの理解を深める上でも、非常に重要な結果です。

一方で、ケンタウルが人間の能力をはるかに超える「スーパー人間」的な振る舞いを示した場面もありました。

例えば短期記憶のテストにおいて、一般的な人間は7桁ほどしか正しく覚えることができないのに対し、ケンタウルは256桁もの数字を正確に想起してしまいました。

このことはケンタウルが純粋な人間の模倣にとどまらず、部分的に「超人的な」情報処理能力を持つことを示していますが、同時に人間らしさという面では新たな議論を生み出します。

さらにケンタウルは、ある意思決定課題で、「まず複数の選択肢から評価の高いものを絞り込み、その後、評価が同率なら最も信頼できる専門家の意見に基づいて選択する」という複雑な二段階のハイブリッド戦略を自然に使いこなしました。