さらに、Deye社はユーザーサポートとして以下のような指示を出しています。

「Deyeがリモート診断を実行できるように、インバーターをオンラインにしてください」

ここでいう「オンライン」とは、インバーターをインターネットに接続することを意味します。この文面だけを見ると、Deye社は非常にアフターサービスが行き届いた企業で、製品を販売した後も責任を持ち、装置が正常に稼働しているかをリモートで確認し、必要に応じて改修対応を行ってくれる。また、アプリに不具合があれば自動でアップデートもしてくれる──そうした姿勢に「良心的な企業ではないか」と感じる人もいるかもしれません。

しかし、ここで重要なのは、Deye社が販売したインバーターの運転状態を、合法的にかつ継続的にクラウド経由で吸い上げる仕組みがすでに構築されているという点です。さらに、「アプリのアップデート」と称して、インバーターを停止させるコマンドを送信することも技術的には可能であることを意味します。

なお、私はDeye社のインバーターを個別に調査したわけではありませんので、ここで述べた内容がDeye社製品そのものに当てはまると断定するつもりはありません。以下に述べるのは、ネット上で公開されているさまざまな情報や、現代の技術水準を前提とした一般論として、こうした仕組みが技術的に「簡単に実現可能」であるということを示したいのです。

スマホアプリの自動アップデートには抵抗はありませんよね?

多くの方がスマートフォンにアプリをインストールして日常的に活用していると思います。時折、「アプリのアップデートを行ってください。容量が大きいためWi-Fi環境での実施をおすすめします」といった通知を目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。アップデートの操作が面倒なので、自動アップデートの設定にしている方も少なくありません。

このアプリのアップデートの仕組みを図2に示します。スマホアプリの場合、アップデートはAppleやGoogleのサーバーから配信されますが、太陽光発電のインバーターの場合は、その相手先がインバーターメーカーのサーバーに変わるだけです。基本的な仕組みは同じで、アップデートに加えて制御コマンドを送信することも技術的には容易です。

図2 アプリのアップデートの仕組み アップデートファイルの中に、停止させる時間が仕組まれていても、誰も気がつかない…