加えて、トランプが望んだ「黄金株」と「国家安全保障協定」を受け入れた日鉄によるUSスチール買収の件もある。トータル3.6兆円の巨額投資だ。日鉄の技術を用いた新USスチールの鋼板は、メキシコから40億ドルかけて米国移転するGMや米国に新たに210億ドルを投資するヒュンダイ、米国生産を増やすホンダ・日産などを含む米国生産車に資するはずだ。これを強調して、し過ぎることはない。

トランプにとって、既に815億ドルもの減税財源をもたらした関税は、7月9日の追加関税発効により更に増収が見込め、「延長は必要ない」のである。内政・外交で無様な姿を国民に晒す石破氏は、今さらカッコ付けずにトランプに土下座してでも頼むべきだ。トランプの協議終了投稿に、間髪入れずデジタル課税を引っ込めたカナダのカーニー首相を見習え。国益のためなら恥も外聞もないのだ。

トランプ肝煎りの「One big beautiful bill」は現地時間7月1日、ヴァンスVPの賛成票を加え51対50で上院を通過し、3日に予定される下院での再議決を経てトランプの机に届くことになる。否決なら、年収40万ドル未満の世帯は2.6兆ドル、中小企業は6000億ドルの増税を被るところだった。この減税恒久化の原資は、景気浮揚による税収増、関税収入、DOGEによるコストカット、そして国債だ。9日以降更に上振れするはずの関税収入は、巨大財政赤字の一部削減に資することだろう。

【追記】 本稿執筆後にトランプ大統領から、日本との関税協議で合意に達するのは「疑わしい」「我々が決める30%、35%といった関税を払ってもらう」との、日本の本気度を疑う発言が飛び出した。公式な申し入れではないので本稿の趣旨は変えないが、押っ取り刀で石破氏が駆け付けないときっと禍根を残す、と付け加えたい。