――なるほど、生物学者として研究し易いのが昆虫だったんですね。でも、虫が嫌いだと捕まえるのも大変ですよね?

森山:それがもうむっちゃ大変で(笑)昆虫好きな人って大体どの種がどこにいるか知ってるんですよね。でも私は苦手だったので何も知らなくて、虫に詳しい人に聞きまくってましたね。

――私たちが知らないだけで、実は虫嫌いな昆虫研究者って多いんですか?

森山:やっぱり虫嫌いは少数派だと思います。ただ、両方いるからいいんじゃないかなと思います。昆虫が好きで詳しい人には当たり前に思っちゃうようなことでも、逆に嫌いで何も知らなかったからこそ、新鮮に感じて、研究テーマとして真剣に取り組めたこともあったと思うんですよね。

そういう様々な目線を持った人の考えが上手く組み合わさって、昆虫研究の分野が盛り上がっていくのだと思ってます。

――とはいえ虫は苦手なわけですよね。どうやって克服したんですか?

森山:学生の時は実習で友達に虫を動かなくするところまでやってもらって、それを触ることから始めました。ただ、やってるうちに研究したいっていう気持ちがどんどん強くなってきて、自然と克服できました。

でもいまだに虫捕りは手袋したり、ピンセットに頼ったりすることもあります。毛虫とゴキブリは本当嫌ですね(笑)

――確かに昆虫って身近だけどよくわからないことが多い印象があるので、苦手でも興味が湧くというのはわかります。

例えば、昆虫は気門っていうお腹の穴から呼吸するっていいますけど、肺とかどうなっているんですか?

森山:そもそも昆虫に肺はないんです。気門から気管っていう空気を運ぶ細い管が体中にわあっと伸びていて、全身でガス交換をしています。昆虫は体中に体液が巡っていて、その液体の中に臓器が浮いているという感じで、全身に張り巡らされた気管がこの体液や臓器に直接酸素を届けているんです。

――ああ、血液が酸素を運ぶ事自体がないんですね。だからヘモグロビンもいらないから昆虫の血は赤くないんですね。この方法は肺呼吸より優れているんでしょうか?