やがて記憶が薄れたり、日常生活が困難になったりするアルツハイマー病の症状が現れてしまうのです。
最近では、このリン酸化タウタンパク質の血液中の濃度を測ることが、アルツハイマー病の早期発見にも役立つとして注目されています。
つまり、このリン酸化タウタンパク質の数値が高いと、多くの場合、認知症の危険が迫っているサインだと考えられてきました。
しかし不思議なことに、胎児や生まれたばかりの赤ちゃんでも、このタウタンパク質のリン酸化が活発であることが動物実験から示されていました。
そこで、国際的な研究チームは人間も同じである可能性を調べることにしました。
もし人間の赤ちゃんにアルツハイマー病と深くかかわるリン酸化したタウタンパク質が多く存在する場合、リン酸化タウタンパク質の量がアルツハイマー病と関連するという既存の単純な予測が成り立たなくなる可能性もあります。
本当に人間の赤ちゃんでも、このタンパク質は多く存在したのでしょうか?
危険なリン酸化タウタンパク質、新生児では「患者の3倍」

本当に人間の赤ちゃんの体内にも、アルツハイマー病の指標であるリン酸化タウタンパク質が大量に存在しているのでしょうか?
その答えを得るため、研究者たちはまずスウェーデン、スペイン、オーストラリアという3つの国で、幅広い年代層から約460名もの血液サンプルを集めることから始めました。
対象となったのは、生まれたばかりの赤ちゃん(正期産児)、予定より早く生まれた赤ちゃん(早産児)、若者や健康な成人、高齢者、そして実際にアルツハイマー病と診断された高齢患者たちです。
特に今回は、人間の新生児でこのリン酸化タウタンパク質の量を直接血液から調べるという世界で初めての試みであり、研究チームは慎重かつ期待を持って調査を進めました。
すると驚くべき結果が出ました。
生まれたばかりの赤ちゃんの血液中に含まれているリン酸化タウタンパク質の量は、あらゆる年代の人々の中で最も高く、なんとアルツハイマー病の患者の約3倍近くも存在することが判明しました。