イノベーションの拠点「GIC Tokyo」
プレイベントの舞台となったGIC Tokyoもまた、今回のテーマを象徴する場所だ。渡部氏によれば、ここは普段、食の未来を創造するための「キャンパス」として機能している。 スペインにある、食で大学の学位が取れる世界三大学の一つ、「Basque Culinary Center(バスクカリナリーーセンター」の国際拠点であり、シェフや科学者、大企業・スタートアップ、といった多様な人々が交わり、イノベーションを創出することを目指している。
施設内には、最新の3Dフードプリンターや、大手電機メーカーの新規事業として生まれた、食べ物を超高圧で柔らかくする「Delisofter(デリソフター)」といった先進的な調理機器が並ぶ。デリソフターは残念ながら販売中止となってしまったが、「嚥下障害の方や高齢者の方も含めた、食のダイバーシティを実現するためには非常に重要な商品であるとの思いから、何か新たな活用方法はないか等、GIC Tokyoににいらっしゃる皆さんと考えていきたい」と渡部氏が語るように、ここは単なる学びの場ではなく、未来の食を社会実装するための実験場でもあるのだ。
深化するIVS2025:「実を伴う機会」の創出へ
IVS代表の島川敏明氏は、今年のIVSが目指す方向性について語った。
2007年に経営者合宿としてスタートし、今年で18年目を迎えるIVSは、2023年の京都開催を機に1万人規模へと一気に拡大した。だが参加者の人数を追うのではなく、「より深みを目指していこう」「しっかりと自分の足元のビジネスにつながるような実現を伴う機会をしっかりと設計していこう」という方針を掲げる。
全体のテーマは「Reshape Japan with Global Minds」。島川氏は「言うなれば今は『スタートアップ五年計画』の後半戦みたいなところ」と日本の現状を分析し、「日本にある、まさにフードやエンタメ、IT、ディープテック(学的な発見や革新的な技術に基づいて、社会課題を根本から解決しようとする取り組み)など。日本には、素材はたくさんあると思うんですよね。それらをしっかりと見直して、どういったものがグローバルで戦っていけるのか、みんなで考えていくような場にしていきたい」と、その狙いを説明した。
その具体策として、いくつかの新たな試みが導入される。
** テーマゾーンの設置 ** : AI、ディープテック、エンタメ、グローバルなど、テーマに特化したゾーンとステージを設ける。 フードテックは、半導体やヘルスケア、宇宙などと並び、ディープテックの領域に含まれる。
** スタートアップマーケットの初開催 ** : VC(ベンチャーキャピタル)から推薦された質の高いスタートアップが1日100社×3日間出展する本格的な展示ブースエリア。
** VCによるブースツアー ** : ただ見て回るだけでなく、VCが市況感を解説しながら注目企業を巡る「AIツアー」のような企画を実装し、他の展示会との差別化を図る。
** サイドイベントの拡充 ** : 京都の町中で約300もの関連イベントが開催される見込みで、街全体がIVSの熱気に包まれる。
これらの施策はすべて、ただ参加して、『楽しかったね』と終わるようなイベントではなく、参加者一人ひとりが具体的なビジネスチャンスをつかめるーーそんな“実りのある場”を実現するための設計なのだ。