各国に学ぶ、日本に必要な起業家支援とは

** ——今お話いただいたような日本の実情と、似た傾向を持ちつつも克服した、という国があれば教えてください。 **
小田嶋:まったく同じではないですが、フランスが似ていますね。10年ほど前までは今の日本とあまり変わらない状況だったと思います。
フランスは、日本とは比べものにならないほどの学歴社会な上、当時は非常に失業率が高かったのです。30歳以下に限定すると失業率が20%を超え、給与水準が高い学士や博士ほど無職になってしまう状態でした。これを打開しようと2013年からフランス政府はスタートアップの支援プロジェクト「フレンチテック」を推進しはじめました。
自分たちで起業しないと仕事がない、という切迫した状況からスタートしたプロジェクトですが、この10年でフランスは起業数も格段に増え、スタートアップ事情が急激に変化していますね。
スタートアップが盛んになるきっかけは、国によってさまざまです。
北欧などは、ガラケー時代の終焉によって市場にあふれてしまった優秀な人材がスタートアップに流れたことが起因しています。エストニアはSkype社の創業チームにエストニア人がいたことで、スタートアップの潮流が高まるという流れがありました。その方がきっかけで次の世代を育てていく、起業家による起業家のためのコミュニティが形成されています。現在のエストニアの起業家たちは、そのコミュニティで育っているのです。
** ——日本が参考にするとしたら、どの国のスタイルがよいのでしょうか? **
大塚:エンデバーはまだオフィスを置いていないのですが、韓国でしょうか。商談にはスーツを着用していくなど、ビジネスの文化も近いものがありますね。
小田嶋:そうですね。国が支援のために支出できる予算額にしても、大学などの教育レベルにしても、英語習得の度合いにしても、非常に似ていると感じます。つまり、韓国にできることは日本にも可能なのです。
ただ、違いがあるとすれば支援をする行政側に、イノベーション支援などの観点を持って横串で動ける人たちがいることですね。全体を把握してハンドリングできる人材がいるわけです。
今の状況で真にどういった人材が必要なのか? という部分において、圧倒的に参考になる国だと思います。