「Empower HER」――ダイバーシティの視点をエコシステムに溶け込ませる

日本の未来を共創する熱狂の現場へ――IVSが繋ぐ地域と多様性、その進化の軌跡の画像3
(画像=『Business Journal』より引用)

 一方、「Empower HER」は、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)に特化したステージだ。しかし、「女性だけのための場」ではないと、藤本氏は強調する。

「『Empower HER』という名前だけ見ると、“女性向け”と思われがちですが、本質は“多様な人々が活躍できるエコシステムをどう作るか”にあります。年齢、性別、国籍、立場…あらゆる壁を越えていくための議論の場なんです」

 このステージのユニークな点は、「IVS本体の運営チームが企画していない」ことだ。D&Iに取り組む外部団体が主導して企画しているため、現場の課題感や課題解決のストーリーがリアルに共有される。

「Empower HER」の根底には、日本のスタートアップエコシステムにおける多様性の促進がある。藤本氏は、「グローバルカンファレンスと日本のドメスティックなカンファレンスの大きな違いはダイバーシティにある」と指摘する。かつてのIVSが「男子校」的であったことを踏まえ、今年は、登壇者の選出基準に「すべてのセッションに必ず女性を一人以上登壇させる」というルールをIVS全体で導入したという。これは、昨年まで藤本氏が担当していた一部セッションでの取り組みが全体に広がった成果であり、グローバルスタートアップカンファレンスへと向かうIVSの大きな一歩といえるだろう。

「セッションに女性がいないと、それだけで視点が偏ってしまいます。視聴者にも“その話ならもう知ってる”と思われてしまうでしょう。多様な視点があることが、参加者のエンパワーメントにつながると考えています。」

「託児所完備」――IVSは“社会全体で支える場”を目指す

「起業家は一人ではありません。家庭やパートナー、子育て環境がある人も多くいます。だからこそ、IVSでは託児所を設けることにしました。それは“女性のため”だけではなく、誰もが参加できる空間を作るため、すべての人のためなのです」

 藤本氏は、こうした配慮が「誰もが参加できる空間」を生むと語る。託児サービス導入は、これまでパートナーのどちらかが子どもの面倒を見るためにカンファレンスに参加できなかった状況を解消し、誰もが参加するチャンスを生み出すものと捉えている。IVSは今、誰もが何かを得られる“場のデザイン”を進化させているのだ。