これにより情報がもはや抽象的な概念にとどまらず、「エネルギー」という実体と密接に結びついていることが改めて浮かび上がりました。(※情報=エネルギーという短絡的なものではなく情報とエネルギーの切り離せなさが確実になったということです。)

この発見は、将来的に量子コンピュータが発展し、より高密度で微細なシステムが作られていく際に重要な制約として考慮しなければならないポイントとなります。

なぜなら情報を消すたびに必ず発生するこの小さなエネルギーの積み重ねが、最終的にはシステム全体の性能やエネルギー効率に大きく影響する可能性があるからです。

さらに、この研究で用いられた実験手法や考え方は、これまで理論でしか議論できなかった量子世界の不思議さを準粒子という直感的モデルで説明可能であることも示しました。

これにより、量子もつれや熱の不可逆性といった難解な現象を視覚化しながら理解する道が開け、量子物理学をより深く理解する助けになると期待されます。

情報の物理的側面に光を当てた本研究は、量子情報科学と熱力学の融合という新たな学際領域の発展に大きく寄与する画期的な一歩と言えるでしょう。

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元論文

Experimentally probing Landauer’s principle in the quantum many-body regime
https://doi.org/10.1038/s41567-025-02930-9

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部