参政党の戦略の核心は、デジタルプラットフォーム、特にYouTubeの巧みな活用にある。長時間の演説、政策討論、イベントのライブ配信などを通じて、主流メディアを介さずに支持者と直接的かつ無修正のコミュニケーションを図っている※7)。

さらに、「会費ペイ」というシステムを利用した洗練されたオンライン会員制度は、資金調達とコミュニティ管理の両方のツールとして機能している※33)。

サポーター、メルマガ会員、一般党員、運営党員といった階層的なメンバーシップは、より深いコミットメントを促す「エンゲージメントのはしご」を作り出している※19)。この構造は、参政党が伝統的な政党というより、政治イデオロギーを製品とする多角的メディア企業のように機能していることを示している。

彼らは日々コンテンツ(動画、機関紙など)を制作し※8)、「タレント」(神谷氏など)を擁し、「オーディエンス」(支持者)を育成する。その政治的成功は、メディアとしての成功の直接的な結果なのである。

4.2 ハイブリッド動員:「クリック」と「ブリック」の統合

参政党は、単なる「ネット政党」に留まらない。その強みは、デジタルでの存在感を、熱心な現実世界での活動と統合している点にある。

全国に張り巡らされた284以上の支部(2024年9月時点)が、その活動の背骨となっている※9)。これらの支部は、地域のイベント、勉強会、選挙活動を組織する。

全国各地で精力的に行われる街頭演説は、党の可視性を高め、一般市民との直接対話を可能にする重要な戦術である※7)。そして、その様子は撮影され、再びYouTubeにアップロードされる。これにより、オンラインとオフラインの活動が相互に強化しあう好循環が生まれている。

4.3 政治実践としての出版活動

神谷宗幣氏や吉野敏明氏といった党の主要人物による書籍の出版も、戦略的に活用されている※8)。これらの書籍は、党のイデオロギーを成文化し、知的な権威性を付与するだけでなく、重要なリクルートツールとしても機能する。