参政党は、単に政治的な信条を変えさせたのではない。彼らが既に持っていたライフスタイルの選択やアイデンティティを肯定し、それを政治的なものへと昇華させたのである。

例えば、オーガニック食品を買い、医薬品に懐疑的で、特定のスピリチュアル系インフルエンサーをフォローしていた人物は、参政党から「あなたの選択は単なる個人の好みではなく、腐敗したシステムに対する正義の政治的行為なのだ」というメッセージを受け取る。これにより、消費・ライフスタイル上のアイデンティティは、強力な政治的アイデンティティへと転換され、極めて熱心で忠実な支持者が生まれる。

3.2 「目覚め」の物語:世界観の分析

党の書籍に対するレビューや支持者の声明を分析すると、「目が覚めた」「真実が見えた」「全てが腑に落ちた」といった言葉が繰り返し現れる※27)。この「目覚め」の物語は、支持者を単なる有権者ではなく、選ばれた者だけがアクセスできる「隠された知識」の継承者として位置づける。

党の書籍や動画は、この知識への鍵と見なされ、日本がいかに「巨大な構図」によって搾取されているかを暴露してくれるものとして熱狂的に受け入れられている※28)。

3.3 若者とジェンダーの側面

JNNの出口調査では、参政党が特に若い世代から高い支持を得ていることが示唆されている※19)。これは保守政党としては直感に反する結果であり、分析に値する。

この若者からの支持は、日本の「長老支配(ジェロントクラシー)」に対する反発の一形態と解釈できる。若者層は、旧態依然とした既存政党が自分たちの未来に対する不安に応えていないと感じており、参政党の「DIY」精神や「次の世代へ」というメッセージに、既存政治にはない主体性と使命感を見出している可能性がある。

また、党の街頭演説では女性候補者が「母親の視点」を強調する場面が多く見られる※22)。これは、子供の健康や教育に関心が高い女性、特に母親層にアピールするための意図的な戦略であることを示唆している。

第4章:コミュニケーション、動員、そして戦略

4.1 デジタル・ポピュリストの手法:オンライン空間の制覇