このイデオロギーは、教育、健康、安全保障といった多様な問題を「グローバリスト勢力による主権侵害」という単一の根本原因に帰結させる、首尾一貫した世界観を支持者に提供する。この統一された物語は、複雑な社会不安に対してシンプルで包括的な説明を与え、心理的に強力な魅力を持つ。これにより、個別の懸念は、壮大な一つの闘争へと昇華されるのである。

2.2 政策の三本柱:その解体

参政党は、抽象的な哲学を具体的な政策に落とし込むため、「3つの重点政策」を掲げている※11)。

教育(人づくり):「テストの点数」よりも「自ら考え学ぶ力(学習力)」を重視し、「自尊史観の教育」を推進する※11)。これは、管理されるのではなく自ら仕事をつくりだせる人間を育てることを目指しており、神谷代表が長年注力してきたテーマと直結している。 食と健康:「農薬や化学肥料、化学薬品を使わない農業」の推進、食品表示法の見直し、そして医療における「化学的な物質への依存」からの脱却を訴える※11)。この柱は、「自然派」やオルタナティブヘルスに関心を持つ層に直接的にアピールする。 国・地域をまもる:外国資本による企業や土地の買収を困難にする法整備、外国人参政権への反対、そして「個人情報と通貨発行権を守る」ための新たなデジタル政府通貨の導入などを提案する※11)。この柱は、伝統的な安全保障への懸念と、現代的なデジタル社会への不安の両方に応えるものである。

これらの政策には、明示的には語られないものの、「生産者主義(プロデューサーイズム)」というポピュリスト的イデオロギーの要素が色濃く見られる。これは、社会の「生産的な」構成員(農家、中小企業経営者、労働者)を称揚し、「寄生的な」エリート層(金融資本家、官僚、グローバル企業)を敵視する思想である。国内農業の保護や外国資本への批判は、左翼的な階級闘争論とは異なる形で経済的不安を持つ層に訴えかけることを可能にし、党を右派の立ち位置に固定している。

2.3 比較で見る参政党の政策的位置づけ