これは「0回の注視(fixation)+1回の視線移動(saccade)」(1度も視線を止めずに一発で目的のターゲットへ視点を移動する)という状態で、迷いのない視覚移動でした。

一方で未経験者は、「1回以上の注視+複数回の視線移動」が多く見られました。彼らはターゲットを見つけても、視線をいったん止めて確認し、さらにもう一度視線を動かすなど、判断に余計な時間を要していたのです。

この視線の「迷い」の多さが、結果としてターゲットに対する反応の遅れや操作スピードの低下につながり、ゲームのスコアを落とす要因になっていました。

Credit:canva

つまり、FPSの上手い人は必ずしもエイムが正確なわけではなく、瞬間的なチャンスを見逃さない反応速度が優秀だったのです。

視線の運び方だけでこれほど明確な差が出たという事実は、「FPSのうまさ」においてどこを見るか、どのように見ているかが極めて重要であることを示唆しています。

これはスポーツや演奏と同じで、熟練者ほど「次に何をするか」が体に染みついており、FPS熟練者の場合は視線が自然に先回りして動くようになるのかもしれません。

FPSゲームにおける「うまさ」とは、正確に的にカーソルを合わせられる手先の器用さ以上に、視線の動かし方にあったのです

FPSがうまくなりたい人は「エイム力」より「迷わない視線」を鍛えよう

この研究から得られる最大の示唆は、「FPSの上達には、視線の使い方を含めた“認知の効率化”が重要だ」ということです。

言い換えれば、単に手のエイム練習を積むだけではなく、「どこを見て」「どこに注目しないか」という視覚的な判断力を鍛えることが、勝敗を分けるカギとなります。

たとえ正確に的に当てる能力が低くても、反応速度を上げることで試行回数を増やすことが出来ます。結果的にそれがもっともスコアを最大化する戦略につながるのです。

YouTubeのトッププレイヤーたちが“敵の出現しそうな場所”を予測して先に視線を送っている様子を見たことがあるかもしれません。