つまり、「ゲームが上手い人はどこが違うのか?」を解き明かすことは、人間の脳や体の使い方を理解する手がかりにもなり得るのです。

そうした問題意識のもと、中国・上海体育大学(Shanghai University of Sport)の心理学者たちは、FPS経験者と未経験者を比較し、「ゲームの成績を決めている真の要因は何か?」を明らかにしようとしました。

実験では、FPSを2年以上定期的にプレイしている大学生28人と、FPS未経験の大学生35人を対象に、ターゲットを狙う課題が行われました。

画面中央の「開始ボタン」をクリックすると、0.25秒または0.5秒後に、画面のどこかに赤い的が現れます。参加者は、できるだけすばやくその的にカーソルを合わせてクリックしなければなりません。

このとき、ターゲットに視線を合わせるまでにどのくらいの時間がかかったか、どの程度余計な場所を注視したかという参加者の眼球運動(eye movements)が高性能カメラで詳細に記録されました。

研究の目的は、これらの視線パターンが経験者と未経験者でどう違うかを明らかにし、FPS上達の本質的な要因を科学的に理解することでした。

上手い人は「視線に迷いがなかった」

実験の結果、的をクリックした際、ターゲットの中心からどれくらいズレていたかという命中の正確さそのものは、FPS経験者と未経験者の間で大きな違いは見られませんでした。

しかし、的をクリックするまでの反応時間(execution time)にははっきりとした差がありました。FPS経験者のほうが、どの条件でもターゲットをより素早く、ためらいなく捉えていたのです。

とくに注目されたのが、そのときの視線の使い方でした。

FPS経験者は、ターゲットの出現に対して視線を一度だけ素早く動かし、そのままカーソルを動かしてクリックするという、シンプルかつ効率的な行動パターンを多くの試行で見せました。