両者はともに「子どもを思う気持ち」から生じる行動であることが多いのですが、自律性の尊重があるかどうかが、大きな違いです。
今回の研究では、親のケアが高いほど、子どもは怒りの感情をうまくコントロールでき、人生満足度も高くなることが明らかになりました。
一方で、親が過保護な場合、子どもは不安感が高まり、感情制御が困難になりがちで、小さなきっかけでイライラしたり、感情的に反応してしまう傾向が高まりました。これは、感情の調整力が十分に育っていないことに由来すると考えられます。
結果として子どもは人生満足度の低下へとつながっていく傾向が示されました。

親の過保護は、子どもに「自分の感情をどう扱えばいいのか」を学ぶ機会を奪い、同時に「自分で決めた」「乗り越えた」という経験の不足によって、不安に対処する力も育ちにくくなると考えられます。
過保護に育てられた人の中には、何かを決めるときに「これでいいのか」「誰かの承認が必要ではないか」と感じてしまう人がいます。これは、常に親の判断を基準にして育ってきたため、自分の決断に自信が持てなくなっている状態といえます。
その結果、自分の人生を自分で選ぶという感覚──心理学では「自己決定感(sense of autonomy)」と呼ばれるもの──が育ちにくくなり、結果として人生に対する満足度も低くなってしまうのです。
過保護を「やさしさ」と思い込まない
この研究は、「親のやさしさ」と「親のコントロール」はまったく別物であることを明確に示しています。
とくにこの研究では母親の過保護の影響が大きい傾向が示されました。これは、多くの文化で母親が育児の中心になっていることと関係している可能性があります。
過保護に育てられた人の中には、親の期待に応えようとするあまり、自分の気持ちを後回しにしてきた経験があるかもしれません。その結果、何をしたいのかがわからなくなったり、自分で決めることに強い不安を感じたりするようになることがあります。