「親に否定されるのが怖い」「自分で決められない」「何かを決めるとき、親の顔が浮かんでしまう」──そんな感覚に心当たりはないでしょうか。

親の愛情はありがたいものです。しかし、ときにその愛情が過剰になると、「過保護(Overprotection)」という形になり、かえって子どもの心を縛ることがあります。

この問題は心理学の分野でもよく研究されており、過保護と愛情の違いやその子どもへの影響が明らかになりつつあります。

そして、イタリアのピサ大学(University of Pisa)のマルティナ・スモルティ(Martina Smorti)氏らの研究チームによる調査では、この一見するとやさしさに見える行動が、子どもから自立の機会を奪い、不安や怒り、そして人生の満足感にまで影響を与えていることが報告されています。

この研究の詳細は、2025年3月に心理学の科学雑誌『The Journal of Psychology』に掲載されています。

目次

  • 「愛情」と「過保護」はどう違うのか?

「愛情」と「過保護」はどう違うのか?

親は誰しも、子どもが幸せに生きてほしいと願っています。

そのために危険を避けさせ、困難に巻き込まれないように助け、正しい道を選ばせようとするのは自然なことかもしれません。

しかし近年の心理学では、こうした「子どもを守る」行動が、度を越えると逆に子どもの精神的な発達や幸福感を損なう可能性があると指摘されています。

Credit:canva

「親の愛情」と「親のコントロール」は似ているようでまったく別物です。

とくに親が子どもの判断に過度に介入したり、危険を避けさせようとしすぎると、子どもは自分で考える機会を失う恐れがあり、その影響は近年の心理学における重要な問いとなっています。

このような問題意識のもと、研究チームは、親の愛情や過保護といった育児スタイルが、成人した子どもの感情や主観的な幸福感にどのように関連しているかを調査しました。