未来展望―地球の自然治癒力を、人間の手で

** ――岩石風化促進技術が将来的に普及した先に、どのような未来像を描いていらっしゃいますか? **

** 中垣教授 ** :岩石風化促進技術は、地球が本来持っているCO2吸収能力、いわば「地球の自然治癒力」を人間の手で少しだけ加速させる技術だと考えています。この技術が広く普及すれば、農業や鉱業といった既存産業と連携しながら、持続可能な形で大気中のCO2濃度を低減していく道筋が見えてくるはずです。

 もちろん、この技術だけで気候変動問題の全てが解決するわけではありません。省エネルギー化や再生可能エネルギーへの転換といった排出削減努力(ミティゲーション)が大前提です。その上で、どうしても排出されてしまうCO2や、過去に排出されたCO2を除去する手段として、岩石風化促進技術が重要な役割を担える可能性があります。

 将来的には、様々なネガティブエミッション技術が適材適所で活用され、ポートフォリオとして地球全体のカーボンバランスを最適化していくことになるでしょう。その中で、岩石風化促進技術が、コスト効率と永続性に優れた選択肢の一つとして、世界のカーボンニュートラル達成に貢献できる未来を目指して、研究開発を進めていきたいと考えています。

** ――ありがとうございました。 **

(構成=BUSINESS JOURNAL編集部)