今回の研究により、「AIに頼りすぎると、人間が本来持っている『自分で考える力』や『創造性』が育たない可能性がある」ことが示されました。

この現象を研究チームは、「認知的負債(Cognitive Debt)」という興味深い言葉で説明しています。

認知的負債とは、本来人間の脳がしなければならない思考や工夫といった活動をAIに任せてしまうことで、後からそのツケが回ってくる(自力で頑張った人との差が開く)という考え方です。

実際、実験に参加した人たちは、AIに任せて書いたエッセイの内容をほとんど覚えておらず、さらに文章に対する達成感や満足感もあまり感じず、自力で頑張ったグループに比べて脳活動も異なっていました。

つまり、AIを使ってラクをすることは一時的には良いかもしれませんが、長期的には「自分で考える力」が育たないリスクを伴います。

とはいえ、研究者たちは決して「AIを使うのが悪い」と主張しているわけではありません。

研究チームは、「重要なのはAIを避けることではなく、まず自分自身の認知力を育てることだ(The key isn’t avoiding AI — it’s building cognitive strength first.)」と述べています。

これはつまり、まずは自分の頭でしっかりと考える力を身につけ、その上でAIの力をうまく活用することが大事だということです。

これはちょうど昔、電卓が登場した頃と似てるのかもしれません。

電卓が普及し始めた時、多くの人は電卓に計算させると人類の「計算能力」や「数学的能力」が落ちるのではないかと心配しました。

しかし実際には、電卓を使うことでより高度な問題解決力や応用力を育てるような教育方法へと変わっていきました。

また現在の数学研究において計算を肩代わりしてくれる高性能なコンピューターの存在は欠かせないものになっています。

AIの普及に伴い、私たちの教育や考え方もまた、同じように変化を求められているのかもしれません。