ひとつは大阪取引所のデータであること。やはり大阪特性はあるから、東証を対象にしたものが待たれるね。もうひとつ。それは成行注文(これをテイク注文と呼んでいる)だけを分析している。おそらく、指値注文は個々の値ごとになるからサンプルが小さくなるのだろう。値に対する能動性は成行注文だから、これでいいと思う。

ワタナベ君:このレポートによると暴落の主因は「流動性不足」だったというのですが、いまひとつ理解ができないのですが。

教授:会計学などで流動性というと「キャッシュ系の資産で、すぐ出動できるもの」ということになるけど、この場合は成行注文が入ったときにそれに迅速に対応できる主体とそれらが持つ資金量、と理解できる。

ワタナベ君:私がある株式に成行の売り注文を出したとします。市場で誰かが対応するのですが、その誰かがいないか、その資金量が少ないと株価は他の誰かが出現するまで下がる。要するに証券業界で言う“板”の厚味のことでしょうか。板が厚ければ流動性を高く、逆は逆。

教授:そういう理解でいいでしょう。でも、それならあまり“新規性”はない。当たり前の説明のような気がする。問題なのは、8月5日の特定の時間帯になぜ流動性とやらがほとんど消失したかだね。

ワタナベ君:そこで注目されるのが高速取引、High Frequency Trading、略してHTFです。公式にはアルゴリズム高速取引です。私が驚いたのは現在の株式市場の取引の70%はこれだということ。そして高速というだけあって1分間に何万回も取引をする。人間ワザではありません。

教授:そのHTFが、その日に急に減った。普段は70%が64.6%になったと書いてある。なぜか? レポートには書いてないけど、これを発見したのは功績ですね。

ワタナベ君:急減したのは8月5日の午後(図1)、特に2時以降ですが、先に引用した時事通信は次のように書いています。

また5日の日中の動きを見ると、現物株市場の昼休み(午前11時半~午後0時半)明け直後に取引全体の中で一部の売り手が占めるシェアが高くなり、価格に与える影響も大きくなっていた。この時間帯に機関投資家など大口の売り注文が入って株価が値下がりし、他の投資家も追随したことが考えられる。金融庁は「流動性の枯渇が急激な相場変動の一因となった可能性が示唆された」としている。