G7以外の新興国、途上国が重要鉱物の非価格価値を重視しなければG7のみが割高な調達コストを負担することとなり、実効性が大きく減退する。

より根源的な問題は、脱炭素(クリーンエネルギー転換の推進)、安全保障(対中依存の低下)、経済安定(インフレ防止、財政安定等)の同時追求が事実上、不可能という点だ。対中依存の低下と経済安定を追及すれば、脱炭素の遅延を許容する必要があり、トランプ大統領の米国はこちらを志向している。

脱炭素と対中依存低下の同時追及は欧州の路線であるが、大規模な政策支援が必要となり、最終的に国民、企業の負担増大につながる可能性が高い。多くの途上国、新興国は脱炭素を安価に追及するためには対中依存の増大を意に介さない可能性が高い。

1975年にG7が発足したとき、石油危機への対応が最大のイシューであった。当時、世界のエネルギー消費に占めるG7のシェアは65%であり、G7の共同対応の効果は大きかった。

しかし2025年になり、世界のエネルギー消費、CO2排出に占めるG7のシェアは44%、25%に低下し、G7だけで世界のエネルギー需給、CO2排出を左右することは不可能だ。しかもG7の関心が温暖化防止に大きく傾斜した結果、クリーンエネルギー技術や重要鉱物の対中依存が増大し、新たな経済安全保障上の脅威をもたらしていることは皮肉である。今回の重要鉱物行動計画が有効な一打となるのか、楽観は許されない。