筆者は第2期トランプ政権でも同じような方式になるのだろう思ってきたが、上述のように今次サミットではエネルギー・温暖化問題を含め、包括的な首脳声明を作らないこととなった。
第2期トランプ政権は安全保障、貿易(関税)で友好国に対して容赦ない対応をとっており、ロシアへの立ち位置を含め、G7でのコンセンサス形成は第1期トランプ政権時以上に難しいことは明らかだった。
カナダは5月のG7蔵相・中央銀行総裁会議の共同声明でトランプ関税批判や自由貿易の重要性に言及せず、米国との立場の違いを表面化させないことを優先した。今回、発表された個別分野の共同声明は、そもそも国際協調やマルチの枠組みに関心の低いトランプ政権と他のG6との間で共同歩調をとれる分野に絞ったということだろう。
重要鉱物行動計画が唯一の共通基盤
その中でエネルギー・温暖化問題に大きな影響を与えるのが、6月17日に発出された重要鉱物行動計画に関する合意文書である。
重要鉱物は半導体と並んでハイテク機器に欠かせず、クリーンエネルギー技術、軍事技術に重要な役割を果たす。しかし、レアアース(主要用途:テレビ、スマホ、パソコン等のディスプレイ、EV車の小型モーター、風力発電設備等)、グラファイト(主要用途:電池用電極、リチウムイオン電池等)、ガリウム(主要用途:LED、半導体、5G基地局部材等)、ゲルマニウム(主要用途:赤外線カメラの部品、太陽電池、光ファイバー、半導体材料等)等の重要鉱物の採掘、精錬において中国が圧倒的なシェアを有しており、中国への過剰依存は安全保障上の重要なリスクをもたらす。現にレアアースの輸出規制等、中国が重要鉱物を政治的武器に用いている。
脱炭素を目指す中でクリーンエネルギーの導入量が増えれば、必然的に重要鉱物への需要も拡大する。IEAの見通しでは2040年までにリチウム、ニッケル、レアアース、グラファイトの需要がそれぞれ9.4倍、5.0倍、3.0倍、5.5倍に拡大すると見込まれている。