他方、重要鉱物の安全保障問題がサミットで取り上げられるようになったのは、この数年のことである。2022年のエルマウサミット以降、強靭で包括的なサプライチェーン強化(RISE)パートナーシップ、鉱物安全保障パートナーシップ(MPS)、持続可能な重要鉱物アライアンス(SCMA)等のイニシアティブが立ち上がってきた。

トランプ政権はクリーンエネルギー転換や脱炭素には無関心であるが、重要鉱物はハイテク機器全般、軍事技術にも不可欠である。だからこそ重要鉱物問題はG7で共同歩調を取れる数少ない分野になったのであろう。

今回、採択された「重要鉱物行動計画」の第1の柱は基準に基づく市場形成である。重要鉱物の採掘・精錬・取引段階で労働基準、汚職防止、環境保護を遵守することで生ずるコストが適切に市場で反映されるべく、基準に基づく市場促進のロードマップを策定するというものだ。名指しは避けているものの、明らかにこれらの基準を満たしていない中国への依存低下を図ろうというものだ。

第2の柱は資金の動員とパートナーシップへの投資であり、G7及び世界中で責任ある重要鉱物プロジェクトに対する投資拡大のため、新興鉱業国、途上国のパートナーと連携し、国際開発金融機関や民間機関による資本動員を図るというものだ。

第3の柱は重要鉱物の加工、代替素材開発、リサイクル等の分野での研究開発の推進である。2025年末までに市場整備のロードマップを策定し、同年9月には行動計画の進捗確認を目的とする国際会議が予定されている。

G7の実効性とジレンマ

行動計画の最大の課題はベースメタル(銅、アルミ)と異なり、採掘、生産、取引量がはるかに小さい重要鉱物において労働基準、汚職防止、環境保全の確保に関する基準を確立し、サプライチェーンを通じての順守をトレースすることが可能か、可能であるとしても費用対効果的か、更にG7以外の新興国、途上国の同調を得られるかという点である。