結局のところ、この研究は日本企業において、単に女性取締役を増やすことが必ずしも業績向上につながるわけではないという重要な事実を示しています。

むしろ、女性取締役の人数を数値として単純に増やすだけでは、業績が改善するどころか逆に利益率が下がってしまう可能性が高いという意外な結果を明らかにしたのです。

日本企業が『女性活躍の効果』を得るために必要なこと

日本企業が『女性活躍の効果』を得るために必要なこと
日本企業が『女性活躍の効果』を得るために必要なこと / Credit:Canva

今回の研究によって、日本企業では女性取締役が増えることで、企業の業績がむしろ下がる可能性があることが示されました。

これは直感的には驚く結果ですが、なぜそのようなことが起きるのでしょうか。

研究者たちは、この原因としていくつかの興味深い可能性を指摘しています。

まず挙げられる理由として、「過剰な監視」という問題があります。

まず女性取締役が増えると、取締役会の監視機能が強化される傾向があります。

これは企業の透明性や管理を向上させるメリットがある一方で、あまりに強すぎる監視は意思決定のスピードを落としてしまい、小規模な企業や財務に課題を抱える企業では特に経営判断の遅れを生じさせる可能性があります。

なぜ女性取締役の増加は監視強化を起こしやすいのか?

女性取締役が増えることで取締役会の監視機能が強まる傾向があることは、多くの学術的研究から明らかになっています。特に、経営学やコーポレート・ガバナンスの研究でよく引用される「エージェンシー理論(Agency Theory)」に基づいて、そのメカニズムが説明されています。

エージェンシー理論とは、企業の経営者(CEOや経営陣)と株主(所有者)の利害が必ずしも一致しない状況を前提に、取締役会が経営陣の行動を監視し、株主に対する責任を果たすことを重視する考え方です。こうした理論的な枠組みの中で、特に女性取締役は取締役会の中で監視役としての役割を強化する傾向があることが示されています。