研究ではまず企業ごとの取締役会メンバーに女性がどれくらいいるのかという比率や、少なくとも1人以上女性取締役がいるかどうかといった基本的なデータを確認しました。
(※調査期間(2006~2023年)における女性取締役割合の平均は約5%ほどでした)
次に企業の業績指標としてよく使われるROA(総資産利益率)とROE(自己資本利益率)のデータを集計し、女性取締役の数との比較を行いました。
ROA(総資産利益率)&ROE(自己資本利益率)とは?
ROA(総資産利益率)は、会社が持っている工場や店舗、現金などすべての資産をどれだけうまく使って利益を生み出したかを示す「資産の効率メーター」です。一方、ROE(自己資本利益率)は株主が出したお金だけに注目し、その投資がどれほどもうかったかを示す「株主の利回りメーター」です。(※ただしROE は借金(負債)が多いほど見かけ上高くなりやすいものでもあります)
分析にあたってはできるだけ正確な結果を出すために、企業の規模や負債の多さといった業績に影響しそうな他の要因を調整し、「女性取締役の数が増えること自体」が純粋に企業の業績にどのような影響を与えるかを統計的に確かめました。
その結果、研究者たちは少し意外なことに気づきます。
なんと女性取締役が多い企業ほど、業績指標であるROAやROEがはっきりと低下するという傾向が明らかになったのです。
具体的には、取締役会に占める女性の割合が標準偏差(約7.8%ポイント)ぶん増加すると、企業の利益率(ROA)が約0.10ポイント低下するという結果でした。
(※より簡単に言えば、たとえば取締役が 100 人いる会社で、女性取締役が 5 人(=5%)だった状況からプラス7.8%されて12~13 人(=約12.8%)へと増えた場合、研究モデルではROA が平均で 0.1 パーセントポイント程度下がるという計算になります。)
これは大きな下げ幅ではありませんが、偶然とは考えられない程度の明確な傾向であり、「女性を増やせば必ず業績は良くなる」という一般的なイメージとは反対の現象が確認されたことになります。