彼が発見したゲーム集中の鍵は「短く繰り返されるループと強いフィードバック」です。

FPSゲームでは、照準を合わせ、弾を撃ち、当たるか外れるかという単純なループが何十回、何百回と繰り返され、そこに即時の視覚・聴覚フィードバック(効果音、敵の死亡アニメーション、ダメージ数値の表示など)が伴います。

もし、30分ごとに敵に遭遇するFPSがあったなら、それは決して魅力的ではありません。

プレイヤーは集中力が無くなり、ゲームを続けたいとは思わなくなるでしょう。

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ゲームでは、行動→結果→報酬の流れが極めてはやく、脳がそれを”快感”として処理している / Credit:Laurie Hérault

一方で、大人気のFPSでは、行動→結果→報酬の流れが極めてはやく、脳がそれを”快感”として処理しています。

プレイヤーに小さな報酬を頻繁に与え、”フロー状態”(深い集中)に導くのです。

さらにエロー氏は、自身の人生を振り返る中で、自分のADHD(注意欠如・多動症)とも向き合いました。

ADHDの人は特に、明確なフィードバックがない作業や、開始のハードルが高い作業に対して強い抵抗を感じやすいという特性があります。

こうした理解をもとに、彼は「ゲームの構造を現実のタスク管理に応用する」というユニークなアプローチに挑みます。

そして誕生したのが、彼独自の“付箋ライフハック”です。

ゲーム的集中力を現実に応用するテクニックとは?

ゲームに集中できるのは、「行動→結果→報酬」のループが短時間で繰り返されるからです。

この構造を現実のタスク管理に応用するために、エロー氏はまず、タスクを細かく分解しました。

例えば「部屋を片付ける」なら、「ベッドを整える」「机を拭く」「床を掃除機がけする」といった2〜5分で終わるマイクロタスクにまで細かく分けます。

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付箋に細かく分けたタスクを記入 / Credit:Laurie Hérault