計15,000人以上の「破局を経験した参加者」のデータが含まれ、同程度の特徴を持ちながら関係が継続している人々(コントロール群)と比較する形がとられました。
分析にあたっては、年齢や性格、収入、学歴、交際年数などの影響を統計的手法(傾向スコアマッチング)でできる限り排除し、「別れという出来事そのもの」が満足度変化に与える影響を浮き彫りにしています。
特に重視されたのが「別れまでの残り時間(time-to-separation)」と満足度の関係です。
従来の「交際開始からの経過時間」ではなく、「別れに向かうタイミング」に着目することで、新たなパターンが見えてきました。
その結果、恋愛満足度には二段階の低下パターンがあることが確認されました。
まずプレ終末期(preterminal phase)とも言える段階では、満足度のゆるやかな減少が数年かけて進みます。
しかし次に訪れる「ターミナル期(terminal phase)」では、満足度が急激に下降し始めます。
この急落は、多くの場合、別れの約1〜2年前から始まることが分かりました。
データセットによって差はあるものの、急落の開始時期は別れの約7ヶ月前(0.58年)から約2年4ヶ月前(2.30年)の範囲に収まっていたと報告されています。
つまり、多くのカップルでは表面上別れを決断するずっと以前から……場合によっては2年以上前から関係の綻びが進行しているのです。
この二段階低下パターンは破局に至ったカップル特有であり、人生全体の幸福度では恋愛満足度ほど明確な低下が見られませんでした。
つまり、今回の急激な低下現象は恋愛関係に特有の現象と考えられます。
さらに興味深い結果として、カップルの中でも「別れを切り出す側」と「告げられる側」とで満足度低下のタイミングに差があることが判明しました。
言わば心の「タイムラグ」です。
研究データの一つによれば、自ら別れを決意する側(イニシエーター)は別れる1年以上も前から徐々に不満が高まり始めていました。