悩ましいのは、学校施設の改修や空調設備設置のような本当は非常に急いでいるが、5号随契の適用に躊躇して、分割発注して1号随契に持ち込むケースの存在である。ストレートに考えれば競争入札を実施する時間的余裕がないのであれば5号随契でよいはずだが、特例中の特例として5号随契を理解してしまうと、説明が楽な1号随契の利用にはしってしまう傾向が強い。どの自治体でも似たような問題に直面しているのではなかろうか。

2号随契や6号随契は一般条項的な枠であり、特に2号随契は判例法上、発注機関の裁量が広く認められているものになっているが、現在ではこの規定の利用に躊躇する自治体は非常に多い。簡単にいえば、裁量が広くても裁量の逸脱の可能性がある限りこれに躊躇するのである。現場においては「各方面からの無駄遣いへの批判」に対する心理的なプレッシャーは相当のものがあるのだろう。

5号随契も同様である。「緊急かそうでないか」の判断が発注機関に委ねられていると、発注機関は躊躇するのである。一方、少額随意契約は枠内か枠外かの判断に迷うことはない。そして上記法令上、分割発注を禁止する条項は存在しない。分割発注を通じて特定の業者と癒着して、金銭の授受が担当者間であるような不正のケースでもない限り、「やむを得ない」ものとして組織内で抵抗なく受け入れてしまうことになる。事情は分かるが、そもそもの制度の趣旨に適ったものではないし、実際の事情と対外的な説明が食い違っている点で不適切である。

解決策は、そもそも5号の適用に「躊躇しない」ということなのだが、この心理的抵抗が強いのであれば、その適用のルールを予め設定しておくことは一つの出口になるだろう。国を含めてどの発注機関にも共通する課題なのであれば、財務省や総務省が一定のガイドラインを作るのも一案である。

同じことは2号や6号の適用についてもいえる。競争入札をする時間的余裕はないことはないが、仮に誰も応募、応札しないいわゆる不調(不成立)の案件で、再入札や8号適用までの時間的余裕がない場合には、緊急ではないかもしれないが2号適用場面になるという見方もできるのではないだろうか。しかし、この場合もやはり、そこに躊躇があるのであれば、何らかの事前のルール化が必要であろう。