日本製鉄、年間で数万時間の業務効率化が見込まれている

 特に大きな成果が生じている事例としては、どのようなケースがあるのか。

「Copilotを導入した企業では、主に『会議の議事録作成』『メール要約』『ドキュメント作成支援』『社内情報検索』などの機能が日常業務で活用され、業務効率化に大きな成果を上げています。例えば、JCB様では、Copilot導入後の月間平均利用率が83%と高く、特に会議関連業務(議事録作成・要約・内容把握)での活用が進み、1人あたり月平均約6時間の業務時間削減が確認されました。

 また、日本製鉄様では、Microsoft 365 Copilotを試験導入後、1カ月で会議メモの自動作成やメール要約、社内ファイルからの知見抽出などで業務効率が向上し、その成果として年間で数万時間の業務効率化が見込まれています。

 これらの事例に共通するのは、Copilotが既存のMicrosoft 365アプリ(Word、Excel、PowerPoint、Teamsなど)に自然に統合されているため、従業員が日常業務の延長でAIを活用できる点です。特に、情報収集や文書作成の初期段階をAIが支援することで、心理的ハードルが下がり、業務のスピードと質が向上しています」(同)

 気になるのは、大きな効果を上げることができている企業は、どのような方法・施策・工夫によって実現できているのかという点だ。

「Copilotの導入で大きな成果を上げている企業は、単なる業務時間の削減にとどまらず、AI活用による新たな価値創出に注力されています。例えば、JCB様では、Copilotの活用を『業務変革』の一環と位置づけ、段階的な導入と社内文化の醸成を両立させる施策を展開しています。具体的には、PoC(概念実証)段階で多様な職種・年齢層からユーザーを選定し、定量・定性のアンケートを実施。これにより、1人あたり月平均6時間の業務効率化に加え、ロールプレイやアイデア創出をはじめとする、企画・創造性の高い業務の補助としても活用し、社員の日常的な働き方に変化が生まれたそうです。また、Copilot活用を促進するために、社内にて『週次Tips配信』や『社内コミュニティサイト』の運営を通じて、ユーザーの自発的な活用を支援。特に、プロンプト共有機能の活用により、業務に即した使い方のナレッジが蓄積され、社内全体のAIリテラシー向上と活用の裾野拡大につながっています。

 一方、日本製鉄様では、生成AIの活用を全社DX戦略に組み込み、Copilotを導入、会議メモの自動生成やメール要約、社内ファイルからの知見抽出などにより業務効率を大幅に向上させました。生成AIの活用を定着させる取り組みとして、Microsoft Teams を使って Copilot に関する情報発信や利用者同士の情報共有を行うコミュニティづくりなどを実施。これらの施策が、生成AIの定着と業務効率向上の鍵となったと伺っています。今後は、各職場にCopilot活用を先導する『チャンピオン』を任命し、成功事例の共有と社内浸透を促進。さらに、効果が見込まれる『モデル職場』には優先的に導入し、成果を可視化。全社的な活用を支えるために、リテラシー教育やトレーニングも実施し、現場の不安や疑問を解消する体制整備を予定しているそうです。

 これらの企業に共通するのは、『AIを使う文化』を育てるための仕組みづくりと、成果を可視化して社内に共有する工夫です。AI活用が単なる業務効率化にとどまらず、創造的なアウトプットの促進や知の共有を通じて、組織全体の働き方と価値創出の質を高めているという点が、Copilot活用の真価といえるでしょう」(同)