さらにアメリカの特性として、サッカーファンの多くが移民コミュニティーに属していることが挙げられる。特定の国を代表するクラブへの関心が強い一方、大会全体への関心が分散する。このため、欧州や南米の強豪クラブ同士の試合以外では、スタジアムが満席になりにくい状況が生じている。


浦和レッズ サポーター 写真:Getty Images

アメリカの治安、物価高

現在のアメリカの物価の高さも、観客動員に影響を与えている。本クラブW杯のチケットは、プレミアムなホスピタリティーパッケージや高額な席が中心で、一般的な米国人ファンにとって手が出しにくい価格帯であるとの指摘があった。特に、開催都市(ニューヨーク、マイアミ、ロサンゼルスなど)は物価が高い地域で、チケット代に加えて交通費や宿泊費が観戦のハードルを上げている。

例えば、6月17日のチェルシー対ロサンゼルス(2-0)は、約7万人収容のメルセデス・ベンツ・スタジアム(ジョージア州アトランタ)で開催されたが、観客動員数は約2万2,000人程度に留まった。これを受けFIFA(国際サッカー連盟)は急遽「1枚チケットを買えば4枚無料」といったプロモーションを実施。しかしこれが裏目に出て、大会のプレミアム感を損なっただけではなく、前売りチケットを定価で買ったファンからは不満の声が上がった。

海外からの観戦者にとっても、渡航費用や現地の物価は大きな障壁だ。日本の浦和レッズサポーター向けの調査では、航空券だけで22万円程度かかるという結果が出た。それでも約5,000人もの浦和サポーターが現地に駆けつけたが、ルーメン・フィールド(ワシントン州シアトル)で行われた浦和のグループステージ初戦リーベルプレート戦(6月18日1-3)の観客動員数は、1万1,974人に留まった。

さらに、特にロサンゼルスでは、トランプ政権による移民政策に反対する勢力がデモを起こし、治安に関する懸念が足かせとなっている。移民コミュニティーが多いとされるアメリカのサッカーファンが、会場での国境警備隊の導入や身分証チェックの強化により、観戦を控える傾向にあると指摘されている。