すると不確帯にあるニューロンは、子マウスが母親と交流するタイミングで活性化することが判明しました。
ただこの段階では、単に交流に関係するニューロンである可能性もありました。
そこで研究者たちは子マウスたちが「見知らぬマウス」や「兄弟姉妹」「同年代の子供」「ふわふわな猫の縫いぐるみ」「ゴム製のアヒル」などと一緒にいるときと、母マウスと一緒に過ごしているときの活性度の違いを比べました。
すると不確帯にあるニューロンは、母マウスと一緒に過ごしているときに特に強く活性化することが判明しました。
この結果は、不確帯にあるニューロン(ZISSTニューロン)が母子間の絆において重要な役割を果たしている可能性を示しています。
研究者たちも「このニューロンが他の誰かではなく母親で特に強く活性化するという事実は興味深い」と述べています。
次に研究者たちは母親から引き離された生後11日の子マウスに対して、化学物質を使って不確帯のニューロンを強制的に活性化してみることにしました。
これまでの研究により、母親と引き離された子マウスは鳴き声を頻繁にあげ、血中ではストレスホルモンの一種であるコルチコステロンが増加することが知られています。
人間の子供で例えるならば、迷子の子供が強いストレスを感じて泣いてしまっている状態と言えるでしょう。
ですがこの状態にある子マウスに対して不確帯のニューロンを活性化させたところ、子マウスの鳴く回数が減り、ストレスホルモンのレベルが低下したことが確認されました。
この結果は、このニューロン(ZISSTニューロン)の活性化が母親の存在を疑似的に感じさせ、孤立による苦痛やストレスを低下させていることを示しています。
さらに興味深いことに、ニューロンを強制的に活性化させている状態で特定の匂いを嗅がせ続けたところ、子マウスは次第に、その匂いに対してポジティブな感情を抱くようになる「関連付け」が形成できることもわかりました。