まず、社員の私生活は原則として個人の自由であり、会社が過度に干渉することはできません。たとえば、休日の過ごし方や趣味、スポーツ活動などは本来自由に選択できるものであり、会社が一方的に制限したり監視したりすることは、パワハラやプライバシー侵害と評価されることもあります。

しかし一方で、社員の私生活上の行為が会社の信用やイメージ、業務運営に直接的な悪影響を及ぼす場合には、会社が一定の規制を設けたり、場合によっては懲戒処分を行うことも法的に認められることがあります。たとえば、社会的に問題視されるような犯罪行為や、SNSでの不適切な発信などがこれに該当します。

社員の立場からは、自分の活動が会社にどんな影響を与えうるかを冷静に考え、会社のルールや申請手続きをしっかり確認し、必要な場合は事前に相談・申請することが大切です。特に、勤務先の就業規則や副業規定、SNS利用ガイドラインなどを一度見直してみるとよいでしょう。

一方、会社側も社員の自己実現や健康増進のための活動を一律に制限するのではなく、どのような場合にリスクが現実化しうるのかを具体的に見極め、合理的なルール運用を心がける必要があります。行き過ぎた規制は、社員のモチベーション低下やパワハラ認定につながるリスクもあります。

個人の自由と会社の秩序、その両方を尊重する姿勢が、現代の働き方には求められています。

李 怜香 社会保険労務士・産業カウンセラー・ハラスメント防止コンサルタント 岐阜県生まれ。早稲田大学卒業。1999年、宇都宮市にて李社会保険労務士事務所(現 メンタルサポートろうむ)を開業。2011年、産業カウンセラー登録。2012年、ハラスメント防止コンサルタント認定、(公財)21世紀職業財団ハラスメント防止研修客員講師に就任。2019年、健康経営エキスパートアドバイザー認定(第1期)。 官公庁から大手企業、教育機関まで幅広い分野で研修実績がある、ハラスメント対策のエキスパート。ハラスメント外部相談窓口の相談対応や、事案解決支援の経験を活かした実践的な指導には定評があり、研修受講者からの満足度は90%以上。法的知識とカウンセリングスキルを組み合わせた独自のアプローチで、職場のメンタルヘルスやハラスメント防止の分野で、企業をサポートしている。