しかし、就業規則の内容は会社が自由に決めることができるものです。社員代表が意見書を出すしくみはありますが、会社がそれに従う義務はありません。
それだけに、就業規則の効力については法律や判例で要件が定められており、それを守っていない場合、後述するように無効になることもあります。就業規則だから絶対というわけではないのです。
とくに、今回の事例のように社員の私生活を会社がどこまで規制できるかは議論の多いところで、裁判になった事例も多数あります。
副業については許可制にしたり、なんらかの規制をしている会社も多いのですが、副業やスポーツ大会への出場は、あくまでも社員の私生活です。会社が社員に指揮命令できるのは業務についてだけです。いくら就業規則に定めていようとも、会社が社員の私生活に制限なく口を出せるわけではありません。
社員の私生活と会社の規制に関する判例
会社員の私生活に対する会社の関与は、裁判でも慎重に判断されています。
会社が社員の私生活上の行為を理由に懲戒処分を科すことができるかについて、重要な指針となるのが日本鋼管事件(最高裁昭和49年3月15日判決)です。
この事件では、社員が私生活で刑事特別法違反により罰金刑を受けたことを理由に懲戒解雇されましたが、最高裁は「会社の社会的評価に重大な悪影響があったとはいえない」として懲戒解雇を無効と判断しました。
昭和49年というと、ずいぶん前だな、と思う人も多いかもしれません。しかし、社員の私生活上の行為については「会社の社会的評価に及ぼす悪影響が相当重大であると客観的に評価される場合に限り、懲戒処分が認められる」というこの判決の考え方は、現在に至っても社員の私生活と会社の規制についての基本的な枠組みとなっています。
社員の私生活を会社が規制できるのはどんなときか
今回の事件はフジテレビというメディア企業で起こったことですが、一般的な企業の場合、社員の私生活や副業は本来自由です。スポーツや趣味、地域活動などに会社が介入することは基本的にできません。