発売から約1か月で、『江藤淳と加藤典洋』の増刷が決まった。江藤や加藤の名前を知らない人も増えたいま、まさにみなさんに支えていただいての快挙で、改めてありがとうございます。

このnoteで初めて告知を出したときから、ぼくは一貫して、社会の分断を乗り越えるための本だと書いてきた。江藤と加藤のどちらも、80年前の敗戦の受けとめ方をめぐり、(たとえば)左右のあいだで「人格分裂」のようになった戦後の日本を憂い、その克服を模索したからだ。

そんな江藤と加藤なら、急変する今日の日米関係になにを言っただろうか。浜崎洋介さんと議論するYouTubeの前編が、6/17から公開されている。

加藤典洋は1995年の「敗戦後論」で、護憲派と改憲派がどちらも「われわれ日本人」を代表できず、いがみ合う様子を、ジキル博士とハイド氏の二重人格に喩えた。しかし30年後のいまでは、むしろ米国こそが①ラストベルト派と、②シリコンバレー派と、③ポリティカルコレクトネス派の「三重人格」状態になっている。

平成のあいだ中、日本が二重人格を統合しようと苦しんでいたら、「この人をモデルについていけば大丈夫」と頼ってきたアメリカまで、三重人格になってしまった。ぶっちゃけ医者の方が重病だったと後でわかるような話で、大変なことである。